2018-2019年越し最長大回り乗車 Part2

2018-2019年越し最長大回り乗車 Part2

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2日目

成田駅
成田駅は完全に迎春ムードでした。通常は降りて成田山新勝寺に向かうのでしょうが、我々は違います。
我々です。待合室にいるのはそういう手合いばっかりです。この中には京浜東北線の人身事故に巻き込まれてなお掻い潜った猛者もいるのでしょう。
後で見てみたら特例的に振り替え乗車を利用できたようです。大晦日の特別サービスみたいなものでしょうね。
やがて待合室で無残に年を越しました。快活な方は動画を撮って派手に祝いましたが、私にはSNSしかありません。バッテリーを温存するため、あけおめするだけで返信はできません。
張り紙
ほどなく駅員さんが2番線に停車した列車を待合所として解放するという張り紙をしました。
私は場所にいくらか迷って、ロングシートに陣取りました。朝の6時になったら千葉行として発車してしまうので注意が必要です。
そして寝袋アイマスク首枕をフル稼働です。酔っ払いでもないのに、貴重品入れを枕代わりにロングシートの座席で横になる背徳感。興奮してきました。
宿泊場所
しかしなんと振動の激しいこと。誰かが歩き通る度に車両がガタガタと揺れます。これってサスペンションがどうなんでしょう。いいんですかね。
加えて酔っ払って騒ぐ方、訳もなく騒ぐ方、スマホを見て大笑いする方。三者惨々たる環境です。
思えば成田で寝泊まりした場合にいい思い出がありません。寝泊まりと言えるほど真っ当な宿泊の記憶もありません。
しかし眠れるのです。前日の睡眠時間で耐えられるはずもないのです。2時間程度ですがまとまって仮眠できました。
その後は15分おきに覚醒と睡眠を繰り返しました。夢うつつで、意外に心地よかった覚えがあります。

0521成田-0748成東

仮眠によって体力を回復し、暖かな自販機のコーヒーを飲んで5時21分発の銚子行きに乗ります。
初日の出を見る乗客が多いかと思えばそうでもなく、ことのほか混んでいなくて助かりました。
終夜運転の一環で成田駅4時10分発の銚子行きがあるのですが、それは結局全く役立たずです。それだと佐原駅で待ちぼうけを食らう訳です。
佐原駅がどんな駅か知りませんが、たぶん待ってたら低体温症になりかねないでしょう。当時の気温は零下です。
それなら成田で成田山へ参拝に行かれる方を横目に待機した方がいいってものです。寝ていたので全く関係なかったですが。
やっぱり成田山は入場規制するくらいには混雑してたみたいです。もし降りられたなら参拝したでしょうに。
そういえば成田ビューホテルの温泉施設を日帰りで利用可能なことを思い出しました。
成田空港に行く前にひとっ風呂浴びたい場合。成田駅から成田ビューホテルへ、成田ビューホテルから成田空港へそれぞれ無料バスで寄り道できます。
さて問題なく先に進めると思ったら、何故か車内が寒いです。暖房が入っていないんじゃないかと思うくらいひたすら寒い。
まさか列車内でハクキンカイロの補充を行えるはずもなく、ただひたすらに耐え忍ぶのみです。
ただ苦痛です。暑さは脱げば簡単に調整できて耐えられますが、寒さは難しく生命の危機もあります。
それで松岸に着いたらもっと寒い。なのに待合室にも入れず外で待たなければなりません。
流石にカイロを再稼働させました。ちょうど日の出時刻らしいですがそんな場合ですらありません。
松岸は寒いだけでなく、駅を出るなりすぐうんこの臭いを感じました。
元旦ですから羽目を外して、うんちぶりぶり事件を引き起こしてしまったのでしょうか。
正解は潮の匂いでした。都営浅草線某駅のようにうんちを垂れ流しながら歩む人なんていなかったのです。
松岸駅
それはそれとして初日の出をこの目で見たのはこれが初めてです。
別に朝日です。日はまた昇るとヘミングウェイも言ってます。ただこれで寒さが和らぐならなんでもよかったです。

0803成東-1013安房鴨川

成東駅
相変わらず、車内でも車外でもとにかく寒いです。さっきはいらない余計な荷物とまで言ったダウンも必要になりました。しかし着てなお寒い。
おかしいくらい寒いのです。成東で乗り換え待ちしているときは心底つらかったです。ひたすら早く帰りたいとだけ思っていました。
なかには私の半分以下の子どもが年越し大回り乗車しています。末恐ろしいというか将来有望というか、首枕を装備していて明らかに歴戦の猛者でした。
もちろん、これはレースではないのです。早く馬橋駅に到着したとしてトロフィーが待っている訳でもなく。
しかしむやみやたら対抗心が湧いてくる。その実は不幸自慢みたいなものでしょう。私もこうして不幸自慢をしています。

1042安房鴨川-1331蘇我

安房鴨川駅
ここからはひたすら内房線を進みます。特筆すべきこともありません。対面乗り換えばっかりで興奮できず、ホームで待たされることも少ないです。
太陽が出てきて気温も上がってきました。房総半島を回るだけあって綺麗な、空とは色味が違う青が全面に広がります。進行方向右側に座ると楽に風景を見ることができます。
しかしビデオカメラのバッテリーが全滅しました。また一つ、旅の意味を失ったのです。スマートフォンは経路情報が詰まっているので乱用はできません。
もうどうでも飯田橋。この旅程では飯田橋も通ります。
蘇我に着くと風景は都会らしくなってきました。それだけはちょっと安心を覚えました。

1335蘇我-1416東京

蘇我駅
舞浜で乗客から夢の国の香りを感じて、いよいよ東京へ戻ってこれました。
それにしても人が多い。一体どうしてお正月なんかに外出をするのでしょうか。家でまったり過ごすのが通例じゃないんですか。
言うまでもなく京葉線の乗り換えは相変わらずの距離です。意識してるのかカロリー表示があります。ダイエット向けですね。
階段
私も途中で餓死するといけないので、かき揚げうどんを食べました。芯まで冷えた体によくしみます。
蘇我駅
しかしイヌイットが高脂肪高たんぱく食をする理由がよく分かりました。脂肪は高カロリー、たんぱく質は代謝にエネルギーが必要でそれによる産生熱があります。
人体が消費するエネルギーは大半が熱になっています。食べないとやはり体温が上がらないのです。
ごちそうさまでした。腹には貯まりましたが財布が空です。

1455東京-1537新宿

東京駅
ここまで来たら、もう事故ったって構いません。最悪歩いてでも帰ってこれます。
しかし東京から素直に帰ればいいものを、ここでも総武線らを使ってこれまた大回り乗車をして距離を稼ぎます。
いったん錦糸町まで行って下町情緒を愉しんで、秋葉原で複雑に乗り換えて神田で中央線
この辺りから建物の背も高く、帰ってきた実感が強まってきます。
素直に帰ればすぐに帰ることができるはずなのに、新宿というゴールとは離れた方向に向かってしまう空しさがあります。

1542新宿-1634馬橋

新宿駅
新宿に着いたら山手線に乗り換えて日暮里に行き、常磐線でゴールの馬橋駅を目指します。
この旅程にウイニングランはありません。しかしラストスパートはあります。
名残惜しさなんて微塵もありません。もう1秒でも早くこれを終わらせたいだけです。
はやる気持ちばっかりで空腹も相まって腹が立ってきました。スマートフォンのバッテリー残量も限界に近いのです。
松戸駅で常磐線各停を待っている時間はイヤに長く感じられました。車内は意外に混雑していて、この期に及んで立つはめになりました。
ゴール
しかし乗ったならすぐ馬橋駅にゴールしました。およそ34時間前に、出発のため北小金に向かう際に通過した駅です。
完全にエンディングでした。こんな感じのエンディングです。
意地でもきっぷは記念として持ち帰ることにしました。こんな虚無な旅行は始めてて、何か一つでも形に残るものを残したかったのです。
ないよりマシという程度のものですが。

知ってる?大回り乗車する人の平均速度

実質2.9kmを34時間24分かけて移動したわけですから、脳直に速度を出すと84.30232メートル毎時になります。
それが私の平均速度。カタツムリより早いです。
しかし何はともあれ1035.4kmにも及ぶ旅程を無事に終えられたことが幸せです。
ミスやアクシデントがない訳ではありませんが、無事に家のドアを再び開けることができました。
もう二度と年越し大回り乗車はやりません。大部分はこんな気分でした。
平成最後の年末年始をこうやって過ごしたのは悔いが残るばかりです。
時は金なりと言いますが、金とは違って時は取り戻せません。もっといい時間の使い方もあったでしょう。
私は旅行が好きなのであって、鉄道それ自体が好きなわけではありません。単に18きっぷという存在が私に鉄道を使わせているだけです。
旅行には目的があります。私の場合だと温泉か狐が主です。しかし今回はそれがありません。
走りきったところで私は狐を感じられませんし、34時間清潔を保つことすらままなりません。
帰ってからも尾を引いています。静止した場で揺れているように感じます。流れるプールに一日中入ってると起きるソレです。
列車接近音の幻聴も聞こえました。否が応でも電車が来ると緊張してしまいます。その緊張を一日中保っていた訳です。
しばらく鉄道はうんざりです。次にどこか行くならバスを使おうと思います。

それでも2019-2020年に挑戦するという方へ

  • 防寒は調整可能であることが望ましいです。ただし嵩張ると扱いが面倒です。
  • カイロなどは午前中必須でしょう。午後から不要かもしれません。
  • ハクキンカイロの必要性は皆無です。燃料携行の不便さの割に合いません。
  • モバイルバッテリーは必須です。途中駅のカフェでコンセントを確保してもよいでしょうが。
  • 裁定が不明瞭ですが、入場券を購入して新幹線改札内に入場できる可能性があります。電源とWiFiを使えます。
  • 可能な限り経路図は印刷して所持しておくべきです。説明を求められて電池切れだと笑えません。
  • 2Lペットボトル入りの飲用水は必須です。脱水は死です。あと電解質もあるといいでしょう。
  • 成田駅に到着する前、千葉駅のNewDaysが最後の買い出しポイントです。酒が飲めるぞ。
  • 寝袋は意外に便利でした。無敵感すらあります。
  • 時刻表はあると便利でしょうけど、バッテリーが切れない限りスマホでも十分です。
  • 本気で眠るなら耳栓アイマスクが必要です。しかし状況が掴めなくなる危険があります。
  • 首枕は便利ですけど、移動中は使わない方がいいです。下手すると乗り過ごすでしょう。
  • 痔持ちなら円座は必携です。さもないと……。

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