オタクは暇になると角煮を作る
オタクは暇になると角煮を作るとはよく言ったものです。エンジニアは特にそうです。
この機に低温調理に手を出した人も決して少なくないと考えています。私見ですが、日本で低温調理が人口に膾炙したのはオタクと呼ばれる人たちが始点だと思います。
私も豚ブロックを煮てみようと思いました。ただ、普通の角煮は美味しいですが飽き飽きしてきました。
そのときふとゴードン・ラムゼイがYouTubeで公開している動画を思い出しました。
豚のバラ肉をブレゼしてみましょう。レシピはこちらを参考にしました。
レシピ
大まかに言うと植物性の食材を焼き、肉の皮目に焼きを入れ、引っくり返して水分を足し、オーブンに移し、ソースを作る5段階で作ります。
機材
- フライパン
- コンロ
- 180℃に設定できるオーブン
- オーブンで使える深めのバット
材料
材料 | 分量 |
---|---|
皮付き豚バラ肉 | 800グラム |
タマネギ | 1個 |
セロリ | 1本 |
ニンニク | 4片 |
スターアニス | 5個 |
カルダモンシード | 3個 |
コリアンダーシード | 大さじ1杯 |
ベイリーフ | 4枚 |
白ワイン | 250ミリリットル |
鶏ガラスープ | 適量 |
塩 | 小さじ2杯 |
黒こしょう | 適量 |
オリーブオイル | 適量 |
粒マスタード | 大さじ2杯 |
調理
- タマネギは4回、セロリは真っ二つに折った後に3回包丁を入れて裁断します。
- ニンニク・カルダモンシードを包丁の腹で潰します。
- 豚バラ肉の皮に切れ目を入れます。今回は包丁が切れないことに腹を立てたので一方向だけですが、もう一方向入れてひし形の切れ目を作ることを強く推奨します。
- 小さじ2杯の塩、お好みの量の黒こしょうを豚肉に擦り込みます。切れ目の間にもお忘れなく。
- フライパンに普通に炒め物をするより多いかなと自問自答するくらいのオリーブオイルを敷きます。コンロに点火して、火の先端がフライパンの底に触れるところから少し強くしたくらいに調整します。
- ニンニク、タマネギ、セロリを炒めます。フライパンに水気がなく、焼き色がついたら次に進みます。
- スターアニス、カルダモンシード、コリアンダーシード、ベイリーフをフライパンに入れます。香りが立ったら次に進みます。
- フライパンの内容物を外周に寄せ、中心に豚バラ肉を皮の方からフライパンに入れます。そのまま3分ぐらいして皮が黄金色になったら次に進みます。
- ここから皮は水濡れ厳禁です。豚肉を引っくり返して、外堀を埋めるみたいに白ワインを回し注ぎます。
- 白ワインが煮立ったら内容物を深めのバットに移します。底に焼く煮るなりした野菜類を敷き、その上に豚を皮を上にして置き、残った汁をバットのすみから注ぎます。皮は水濡れ厳禁です。
- この辺りでオーブンを180℃に予熱しておきます。
- フライパンは洗わずに飲用水を煮立てて鶏ガラスープを調製します。濃度は各製品の標準に準じます。
- 煮立った鶏ガラスープを慎重にバットのすみから注ぎます。皮は水濡れ厳禁です。脂身に液面がかかるくらいで注ぎ足しを止めます。
- 予熱が終わったオーブンにバットを入れ、180℃で95分加熱します。
- 加熱が終わったらバットを出し、皮目が仕上がったかナイフで優しく掻いて確かめます。満足できなかったら追加で25分まで180℃で様子を見つつ再加熱可能です。
- 調理が終わった肉は皿に移し、バットに浮く油を除去します。デカンテーション、お玉、氷、お玉と氷、分液ろうと、食パンなどお好きな方法で油を取り除いてください。下水にはそのまま流さないでください。
- バットに残った液体と野菜をフライパンに移し、粒マスタードを入れて煮立ててソースは完成です。
- 盛り付けは一任します。
コラム
代用
元になったレシピと比べれば所々で改変しています。ここは日本であってイギリスではないので、材料の可用性が違います。
なので代用をする必要があります。まずタマネギとセロリです。本来はフェンネルの鱗茎部を使うようです。近所では見かけません。ロマネスコとかアーティチョークはあるにもかかわらず。
まず見た目だけでタマネギを選定し、後からセリ科と知ってセロリを足しました。
次にコリアンダーシードです。本来はフェンネルシードを使います。これも同じセリ科だからどうにでもなるだろうと踏んでのことです。
そしてこっそり鶏ガラスープもごまかしています。鶏ガラスープの素が足りなくて、鶏油と和風だしを加えて近付こうとしました。鶏油は香り、和風だしはアミノ酸の補充としてです。最終産物は香辛料の香りと混ざって分かりませんでした。
皮目
パリパリの皮目は憧れです。これは低温調理器では得られません。
そもそもまず皮付きの肉が必要ですが、本州には皮付きの豚肉を食べる文化がありません。なので普通のスーパーに置かれる見込みは薄いです。
ところが最近、皮付きの豚バラ肉の入手性が向上した気がします。前は上野アメ横とか輸入食品店とかに行かないと手に入らなかったのに、今は肉のハナマサに置いてあります。
どうしても食べたいけど出歩けないならAmazonにもあります。冷凍だと肉の水分に気を遣う必要があるように思えますが。
さて、どうにかして皮付き豚肉を入手したらクランチーな皮目を生み出すために工夫が必要です。
実のところ今回は実験をしました。食酢を皮に塗るとパリパリになるというライフハックです。
焼くほぼ直前にハケでお酢を塗りました。比較するため片方には適用し、もう片方は無処置のままです。
結果は確かにパリパリになりました。なりましたけど硬度が度を過ぎています。パリパリどころかバキバキです。横着して切れ目を一方向にしたのも祟ってかみ切れません。
それと比べると食酢を塗っていない方は柔らかくもパリパリ感を失っていません。こっちが正しいでしょう。
結局、固い方はは皮だけ切って砕いて飾りにしました。まさかガセネタを掴まされたのでしょうか。
なぜかを考えてみると、まず正しいパリパリの皮を作るために大切なのは乾燥です。湿っているとパリパリにはなりません。レシピでも皮を濡らさないように白ワインや鶏ガラスープを注ぐように書いています。
さて、食酢を使ったタイミングはオーブンで焼く直前でした。しかし多くのレシピと違って、今回はオーブンに入れる前に若干火を通しています。
火を入れる前に濡らすのと、火を入れた後に濡らすのでは違いがあるようです。
今回の変則的なブレゼではオーブンでの加熱中に液面から大量の水蒸気が出るでしょう。しかし事前に焼き目をつけると表面が油でコーティングされて液面から上る水蒸気から守られると考えられます。
なのに焼く前に食酢を塗ったらその油によるガードを剥がされます。これが失敗の原因だと思います。
食酢で皮目をパリパリにする方法は再試験が必要でしょう。食酢の他にはレモン汁や重曹、大量の塩が使えるらしいです。
これらから、やはり皮を乾燥させる目的でしょう。浸透圧で肉の皮から水を抜くつもりです。
ブレゼ
さも当然のようにブレゼという単語を使っていますね。ブレゼとはフランス料理の調理方法で、本来は蒸し煮というだけあってフタをします。
フタをしないで水を飛ばすので変則です。そうすると柔らかな身とパリパリの皮が同時に味わえることになります。
低温調理した肉を後からフライパンで焼いて焼き目をつけてカリッとさせるのもありますが、それとはまた別の味わいでした。
以外に楽な調理法でした。見た目は豪勢になるので、客人に出す料理に良さそうです。ブロック肉の時点で、そこはかとないおもてなし感があることは否めませんが。
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